聖書学とは
作成:川上純平(2008/2/5)
聖書学とは、聖書について研究する学問であるが、主として文献学的、歴史学的方法を用いて、聖書の各文書の内容と本質、特徴を明らかにしようとするものである。
聖書は、その成立当初から教会において信仰の書として読まれたきたゆえに、「神の言葉」として尊重されたが、それゆえに、その「一字一句」を詳細に研究し、その内容を明らかにしようとした。しかし、18世紀、近代に入り、啓蒙主義や合理主義の影響によって聖書学を教義学から独立させ、聖書を人間が書いた古典的著作物として学問研究の対象とするに至り、他の学問的成果に基づいての研究(例えば、心理学的歴史学的研究や社会学的研究)を行い、それが教会の権威との緊張関係の差異によって学者たちの立場が様々に存在することとなった。
聖書学は次のように項目ごとに分類される。
・聖書論・・・・・「聖書とは何か」を神学的に研究し、信仰にとっての聖書の位置づけを行うもの。
・正典論・・・・・聖書正典とは何かを研究するもので、その歴史、根拠、意味などを考える。
・解釈論・・・・・聖書解釈とは何かを考え、その解釈方法について研究するものであるが、現代の読者に解る様に説明することを示すものであるとする学者
もいる。
・緒論・・・・・解題とも言い、聖書の各文書について一定の知識や研究成果に基づいて説明すること。
・釈義・・・・・聖書本文の言葉の意味を明らかにし、検討すること。
・聖書神学・・・・・聖書各文書が語る神学的特徴をまとめ、その意味、福音理解を明らかにするもの。
・語学・・・・・聖書の本文に使用されているヘブライ語やギリシア語及びその周辺領域の言語も含めての学び。
・本文・翻訳研究・・・・・聖書の最古の本文を探求し、それがどのように翻訳されていったかを研究するもので、本文批評はここに含まれる。
・時代史・・・・・聖書の舞台となった地域及び周辺諸国の歴史についての学び。
・考古学・・・・・考古学的発掘によって聖書の内容を検証し、探求する学問で、聖書研究に新しい理解を与えるもの。
・外典・偽典研究・・・・・聖書正典に含まれなかった外典・偽典とされた文書の研究(例:ユダ福音書)。
〈参考文献〉
・『キリスト教大事典』、教文館、1991年〈改訂新版第10版〉。
・『新約聖書神学事典』、教文館、1991年初版。
・石井裕二著『講義:神学7 講義レジュメ及び講義ノート』、同志社大学神学部、 1992年。
・『旧約聖書神学事典』、教文館、1995年〈第3版〉。
・『岩波キリスト教辞典』、岩波書店、2002年。